
FAO欧州・中央アジア地域事務所
気候変動・減災・エネルギーチーム
環境・気候変動ジュニア専門官
山脇 大さん
私は2016年度に実施されたジュニア・プロフェッショナル・プログラム(JPP)を通じて、今年3月にFAOで勤務を開始しました。JPPとは、FAOが独自に実施している若手職員採用試験(32歳以下)であり、給与・その他の手当て等はFAO人事局が負担し、2年間の任期で正規職員としてnon-representedおよびunder-represented*の加盟国から職員を採用する制度です。昨年5月に公募がかかり、書類選考と面接試験(英語・ロシア語)、レファレンスチェックを経て、現在私は、ハンガリーに置かれている欧州・中央アジア地域事務所において、環境・気候変動ジュニア専門官として勤務しています。当事務所はFAOが設置している5つの地域事務所のうちの1つであり、FAO加盟国のうち53ヶ国とEUが含まれます。また、実際のプロジェクト実施国の多くが旧ソ連諸国ということもあり、業務でロシア語を使用する機会が多いのですが、学部時代にロシアへ1年間留学していたことがこの点では役立っています。私は主に、当該諸国の気候変動とエネルギーに関わる分野を担当しています。
気候変動分野では、気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC) に基づく資金供与の制度の運営委託された多国間基金「緑の気候基金(Green Climate Fund, GCF)」に関連する業務が多く、支援対象国における案件のプロポーザル作成およびGCFへの資金アクセス向上を目指すレディネス支援を行っています。キルギスにおける国家指定機関やその他利害関係者とともに、GCFプロポーザルの作成に向けた対象分野の選定およびプロジェクト形成に関する議論を行いました。エネルギー分野では、ウクライナやベラルーシの放射能汚染地におけるバイオエネルギー利活用に関する分析ドラフトを作成しています。その中では、国際情勢に左右される不安定なエネルギー供給等の外的要因、実際の利活用時に想定されうるリスク(燃焼による放射線量等)や費用便益(燃料調達コスト、市場アクセス、地域経済への波乃効果等)の分析を行っています。加えて、53加盟国とEUを対象とし、今年9月末に開催された第40回FAO欧州農業委員会においては、農林水産分野における優先的な政策課題が共有されると同時に、自らが執筆した気候変動に関わるレポートに関する内容が、国際的かつハイレベルな場で議論されました。また、壇上で執筆者として紹介されたこともあり、改めて身が引き締まる思いでした。
FAOは、国際色豊かでダイナミックな勤務環境だと感じています。業務分野は、以前勤めていた国際エネルギー機関(IEA) や経済協力開発機構(OECD)における分析業務との親和性が高いのですが、それ以外の分野(減災、越境性動物疫病等)に関わることもあり、その場合は厳しい時間制約の中で知識を効率的に吸収する必要があります。一方で、さまざまな研修の機会も整備されており、最近ではFAOと世界気象機関(WMO)、欧州宇宙機関(ESA)が共同開発した、「農業気象学とリモートセンシングによる干ばつモニタリング」の研修にも派遣されました。専門分野の経験だけではなく、幅広い知識を持ったプロフェッショナルへと成長していけるよう日々邁進しています。
国連の統計によると、専門職職員(国際的公募による採用)のうち20代の割合は1.3%程と大変少なく、これは総じて国際機関がより高次で経験豊富なプロフェッショナルを求めていることを意味しています。その一方で、国際機関が実施する競争力試験(YPP、JPP、IPP等)やインターン/コンサルタント経験等を通じて、若手職員にも扉は開かれています。もちろん、こなすべき仕事の量も求められる質もスピードも高い水準であり、まだまだ荒削りな自分としては苦心惨憺することもありますが、20代という若い段階で、国際的な文脈において専門経験を深めるとともに、新たな分野と最先端の政策課題に関する知識を貪欲に吸収していける理想的な環境だと確信しています。若手職員のポストは特に高倍率ですが、国際機関を目指す20代の方々は積極的に挑戦していただきたいと思います。
*通常予算で雇用される自国出身の国連職員が皆無(non-represented)あるいは国の処出金額等を考慮して設定される望ましい職員数に達しない(under-represented)国のこと