国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所

世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)2024年報告

世界の栄養不足人口と栄養不足蔓延率(Prevalence of Undernourishment, PoU)

SOFI2024

注:2020年以降は、推定範囲の上限値と下限値をバーで表示。
* 点線はナウキャストに基づく2023年の予測値。
出典: FAO. 2024. FAOSTAT: Suite of Food Security Indicators. [2024年7月24日引用]. https://www.fao.org/faostat/en/#data/FS. Licence: CC-BY-4.0.


世界の栄養不足人口と蔓延率(PoU)(2023年推定値)

 栄養不足人口:7億1,300万人~7億5,700万人
 栄養不足蔓延率(PoU):8.9%~9.4%

世界の栄養不足人口と蔓延率(SDG指標2.1.1)の推定値から、2023年時点で、「飢餓をゼロに」のSDGs目標2に向けた進捗が芳しくないことが明らかになった。
世界では、紛争や異常気象の増加により、世界的なパンデミックからの立ち直りがますます遅れるなか、インフレ圧力、特に食料の相対価格の上昇により、多くの人々が食料を手に入れるために必要な経済的利益が蝕まれる状況が多くの国で続く。
飢餓に直面した世界の人口の割合は、2019年から2021年にかけて急激に上昇した後、3年連続ほぼ同じ水準で推移している。最新の推定では、2023年の世界の栄養不足蔓延率(PoU)は9.1%であった。栄養不足人口は、2023年には約7億1,300万人(世界人口の8.9%)から7億5,700万人(同9.4%)と推定された。この中央値(7億3,300万人)をとると、2019年に比べ、2023年には飢餓に直面した人が約1億5,200万人増えた可能性がある。

 

地域別の栄養不足人口及び蔓延率(PoU)(2023年推定値)

 アジア地域: 3億8,450 万人/8.1%
 アフリカ地域: 2億9,840 万人/20.4%
 ラテンアメリカ・カリブ地域: 4,100万人/6.2%
 オセアニア地域:330万人/7.3%

栄養不足蔓延率(PoU)が最も高い地域はアフリカで、同地域の人口の20.4%。これに対し、アジアは8.1%、ラテンアメリカとカリブ海諸国は6.2%、オセアニアは7.3%である。
しかし、依然として、世界で飢餓に直面した人口の半数以上、3億8,450万人はアジアが占めている。アフリカでは、2023年に2億9,840万人が飢餓に直面していた可能性があり、ラテンアメリカとカリブ海諸国では4,100万人、オセアニアでは330万人である。

 

食料不安に直面する世界の人口(2023年推定値)

 重度・中程度の食料不安に直面する世界の人口:23.3億人
 重度の食料不安に直面する世界の人口の割合:28.9%

SDG指標2.1.2―食料不安の経験尺度(Food Insecurity Experience Scale, FIES)に基づく、中程度または重度の食料不安に直面する人の割合(蔓延度)―は、すべての人が十分な食料を得る権利を実現するという、より野心的な目標に向けた進捗状況を測るものである。

新たな推定によると、FIES に基づく中程度または重度の食料不安に直面する人口は、COVID-19 パンデミック以前のレベルをはるかに上回っている。パンデミック中の2019年から2020年にかけて食料不安が急増して以来、食料不安の水準は4 年間でほとんど変化していない。2023年には、世界人口の28.9%にあたる23億3,000万人が、中程度または重度の食料不安、つまり十分な食料を定期的に入手できない状態にあったと推定されている。2020年から2023年まで食料不安に直面する人口の割合はほぼ横ばいであったが、その間に世界人口が増加したため、世界で中程度または重度の食料不安に直面する人の数は6,500万人以上増加した。

 

経済的な理由で健康的な食事を摂ることができない人口(2022年推定値)

 経済的な理由で健康的な食事を摂ることができない世界の人口:約28.3億人

経済的な理由で健康的な食事を摂ることができない人口は、2020年から2022年にかけて2年連続で減少した。2021年には36.4%(28.8億人)であったのに対し、2022年には35.4%(28.3億人)であったと推定された。この2年間で状況は改善しているものの、2022年には約28.3億人、すなわち世界の3分の1以上が、経済的な理由で健康的な食事を摂ることができなかった。

 


主要用語の定義


食料安全保障:すべての人が、いかなる時にも、活動的で健康的な生活を送るために、必要とする食事や食の嗜好を満たす、十分で安全かつ栄養のある食料を、物理的、社会的、経済的に入手できる状況。この定義に基づき、食料安全保障に関する4つの側面が挙げられる:
 ・Availability(食料が物理的にあるか)
 ・Access(食料へ経済的・物理的にアクセスできるか)
 ・Utilization(食料を有効に活用できているか)
 ・Stability(安定的に食料が保障されているか)

食事の質(または健康的な食事): 多様性(食品群内および食品群間)、適切性(必須栄養素の必要量に対する充足度)、適度な摂取(健康状態の悪化に関係する食品および栄養素)、バランス(エネルギーとマクロ栄養素の摂取量)の4つの主要な側面からなる。また、摂取される食品は安全でなければならない。

食環境:消費者が農業・食料システムに関与し、食料の入手、調理、消費に関する意思決定を行える物理的、経済的、政治的、社会文化的状況。

飢餓:食事からのエネルギー摂取量が不足していることによって引き起こされる不快感または苦痛。本報告書では、飢餓という用語は慢性的な栄養不足と同義であり、栄養不足蔓延率(PoU)によって測定される。

栄養不良:マクロ(主要)栄養素および/またはミクロ(微量)栄養素の不適切、不均衡、または過剰な摂取、および/または体重減少の原因となる疾患によって引き起こされる異常な生理状態。栄養不良には、栄養不足(幼児の発育阻害や消耗症、ビタミンやミネラルの不足(微量栄養素欠乏症とも呼ばれる))だけでなく、過体重や肥満も含まれる。

中程度の食料不安:人々が食料を入手できるかどうかについて不確実性を抱え、お金などの資源不足により、一年の間に摂取する食料の質や量を減らさざるを得ないことがある食料不安のレベル。中程度の食料不安とは、食料への一貫したアクセス不足を指し、食事の質を低下させ、通常の食事パターンを乱す状況を指す。食料不安の経験尺度(Food Insecurity Experience Scale, FIES)で測定され、SDGs目標2.1(指標2.1.2)の進捗状況を測るために用いられる。

重度の食料不安:一年の間のある時点で、人々が食料を使い果たし、飢餓を経験し、最も極端な場合には一日以上食料を摂取できない状態で過ごしたことがある、重度の食料不安の状況。食料不安の経験尺度(FIES)で測定され、SDGs目標2.1(指標2.1.2)の進捗状況を測るために用いられる。

栄養不足:正常で活動的かつ健康的な生活を維持するために必要な食事エネルギー量を、個人の習慣的な食料摂取量では十分に賄えない状態。栄養不足蔓延率は、飢餓とSDGs目標2.1(指標2.1.1)に向けた進捗状況を測定するために用いられる。