国連家族農業の10年
国連は、2019年から2028年を「国連家族農業の10年」(UN Decade of Family Farming: UNDFF)として、家族農業の役割を再評価し、どのような支援が必要か考えようと呼び掛けています。
「国連家族農業の10年」の背景
国連2014年に設定「国際家族農業年(IYFF2014)」では、家族農業が食料安全保障と栄養改善の促進、そしてより包摂的で公平な社会の構築への貢献に重要な役割を果たしていることを広く世界に周知しました。この成功を経て、国連は2017年、2019-2028年を「国連家族農業の10年(UNDFF)」とすると定めました。
FAOと国際農業開発基金(IFAD)は国際運営委員会を設置し、「国連家族農業の10年」の発展と実施を監督、支援しています。
家族農業とは
- 農業、林業、牧畜、漁業、養殖業の営み方のひとつ
- 家族を基盤としたすべての農業活動を含む
- 家族により管理・運営され、農作業の大部分をその家族内の労働力に依存している
- 世界の農家の約90%が家族農家であり、その人口は約5億人にのぼる
- 家族農家は、世界の食料生産の80%を担っている
「国連家族農業の10年」のビジョン・ステートメント
「多様性あり健康的且つ持続可能な食料・農業システムが繁栄し、レジリエンスのある農村・都市地域コミュニティが尊厳と公平性をもって、飢餓と貧困のない質の高い生活を送る世界」
「国連家族農業の10年 2019-2028: 世界行動計画」
- FAOとIFADが2019年5月29日イタリア・ローマで発表。
- 持続可能な開発の重要な主体者である家族農業者を支援するために、共同の、一貫した、包括的な取り組みを加速させることを目指す。
- 各国政府、自治体、議員、国連・国際機関、地域機関、農業者、学術研究機関、市民社会、中小企業、民間企業を含む国際社会へ向けた詳細の行動指針を提供する。
7つの活動の柱
- 家族農業を強化する政策環境の整備・発展
- 若者の支援と家族農業の世代を超えた持続可能性の確保
- 家族農業のジェンダー公平性と農村女性のリーダーシップ的役割の促進
- 知識の生産と農家の声の代表、都市と農村間をまたぐ包摂的なサービスの提供のための、家族農家組織と能力の強化
- 家族農家や農村世帯・コミュニティの社会経済面での包摂性やレジリエンス、福利の強化
- 気候レジリエンスあるフードシステム構築のための家族農業の持続可能性の促進
- 地域開発、生物多様性・環境・文化を保護するフードシステムに貢献するイノベーションを促進するための多面的な家族農業の強化
家族農業に関する主なデータ
農村地域の貧困について
- 世界の貧困層や食料不安を抱える人々の約8割が農村地域に住んでいます。その大部分は農業を営んで生計を立てています。
- 農村地域の貧困層の大部分は、食料や収入を農業、水産物の養殖に頼っています。しかしながら、これらの小規模家族農家は、生産に必要な資源や機会、市場へのアクセスが限られています。
家族経営の農場について
- 世界には6億以上の農場があります。
- 農場の9割以上は、個人または家族によって経営され、主に家族労働で運営されています。
- 家族農業が世界の農地に占める割合はおよそ7割から8割です。家族農業は、世界の食料の8割以上を生産しています。
小規模漁業について
- 漁師のうち、9割が小規模事業者です。そのうちの9割以上が開発途上国に住んでいます。
- 開発途上国では、小規模漁業が漁獲量の半分を占めています。
牧畜について
- 牧畜を営む人々は推定で約2億人。地球の陸地の3分の1を覆う放牧地で家畜を飼っています。
山岳部の農業について
- 山岳部における農業は主に家族経営です。開発途上国などで山岳地域に住む人々の約4割(約3億人)が日々の食料を安定して得られておらず、その半数が慢性的な飢餓に苦しんでいます。
森林における農業について
- 家族農家には森林におけるコミュニティも含まれます。農村地域の極度の貧困層の約4割が森林やサバンナ地域に住んでいます。
先住民族について
- 森林の33%が先住民族や地元のコミュニティによって管理されています。
- 世界では90カ国以上に3億7000万人以上の先住民族が住んでいます。
- 先住民族の人々は世界の人口の約5%を占めていますが、世界の貧困層のうち、約15%を占めています。
- 伝統的な先住民族の領土は、世界の陸地の最大22パーセントを占めます。
若者について
- 世界の若者の人口は増加すると予想されていますが、若い女性と男性、特に開発途上国の農村地域に住む人々の雇用機会は限られています。
農村地域の女性について
- 農場労働のほぼ50%が女性によって行われていますが、彼女たちが保有する農地は15%のみにとどまります。
- 極度の貧困を強いられている男性100人に対し、同様の女性は122人にも上ります。