国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所

ラクダ科の国際年2024

2024/03/29

FAO駐日連絡事務所長の日比絵里子が2024年3月発行 「ラクダ科の国際年2024」(「国際農林業協力」Vol.46. No.4)を執筆しました。記事は下記となります。


 

国連食糧農業機関駐日連絡事務所長 日比絵里子

 

国連は、今年2024年をラクダ科の国際年に定めました。ラクダ科動物には、私たちがすぐに思い浮かべるおなじみのヒトコブラクダやフタコブラクダのほか、アルパカやリャマ、ビクーニャやグアナコなども含まれます。世界の90を超える国で、ミルクや肉などの食料を生産するだけでなく、毛を使った繊維や有機肥料も提供してくれます。また、ヒトコブラクダやフタコブラクダは「砂漠の船」とも呼ばれており、厳しい状況下でも生き延び、長距離を移動し、水がなくても長期間生き延びることができます。ラクダ科の動物は、他の家畜種が生存できないような厳しい環境でも生存し繁殖できるため、アンデス高地やアフリカ、アジアの乾燥・半乾燥地帯の先住民族や地域社会の経済、食料安全保障、そして世界中の文化や社会に大きく貢献しているのです。

今日、南米にはアルパカがおよそ750万頭、リャマ400万頭、ビクーニャ35万頭、グアナコ60万頭が生息しています。一方、世界のヒトコブラクダとフタコブラクダの数は、2001年の2200万頭から2021年には3,900万頭と、過去20年間でほぼ倍増しました。その87%はアフリカに、約13%はアジアに生息しています。

適応能力が高いラクダ科動物は、気候変動という大きな課題の対処に役立つ利点を持っています。例えば、気候変動の影響を受け生産性が低下した乳牛の代替としての可能性など、その能力の潜在性に注目していくべきです。

ラクダ科動物は、SDG2(飢餓との闘い)、SDG1(貧困撲滅)などの目標達成に向けて貢献しているだけでなく、SDG15(陸の豊かさをまもる)やSDG13(気候変動への対応)を推進する上でも、重要な役割を果たしていると言えるのです。

ラクダ科の国際年を通じて、ラクダ科動物の未開拓の可能性に対する認識が高まり、ラクダ科動物に関連する分野への投資が拡大し、研究、能力開発、革新的な手法や技術の利用がさらに拡大をすることを願います。同時に、この国際年により、先住民族や地域社会の伝統的知識や慣習、遺産などの維持や保護がより一層進むことも期待されています。

 

関連リンク:

『国際農林業協力』Vol.46 No.4(通巻209号) (jaicaf.or.jp)