国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所

紛争下のイエメンで食料と栄養の安全保障を強化するため、日本政府が8億9100万円を拠出

2019/01/31

ローマ

世界最悪の食料危機に瀕する国での飢饉を避けるために、農業を回復させることが不可欠

世界最大の人道危機に直面している紛争下のイエメンで、最も脆弱な家庭の食料・栄養の安全保障を強化するFAOの取り組みを支援するため、日本政府は800万米ドル強(8億9100万円)を拠出しました。

これはキャッシュ・フォー・ワーク(労働の対価としての現金支援)を利用して、穀物や豆類の種子の配給、家畜の補充、灌漑システムやその他の農業施設の修復など、重要な農業資材やサービスの提供を通じて達成されます。これらの支援は、食料が安定して入手できない世帯が生きていくために必要な食料を生産し、収入を生み出すのに役立つだけでなく、農村部の雇用創出を通じて地域経済を活気づけることにも役立ちます。

この2年間のプロジェクトは、紛争の影響を受けているイエメンの人々約20万人に行き届くことを目指しています。

この資金調達契約は本日1月31日、ローマのFAO本部で、FAOに対する常駐代表を務める片上慶一駐イタリア大使とジョゼ・グラチアノ・ダ・シルバFAO事務局長によって署名されました。

グラチアノ・ダ・シルバは「FAOは、イエメンの飢餓との闘いの最前線において、きわめて脆弱な人々に対し、その家族や地域社会の食料生産を再開し維持するための手立てを提供しています」と述べ、 「日本政府からのこの寛大なご支援によって、イエメンの人々にとって最も必要な時期に支援を継続することができます。これによって、FAOはイエメンで最も深刻な食料不安に置かれている人々の命と生活を救うことができ、長期的にみた食料援助と食料輸入への依存を減らすため、農業を軌道に戻す手伝いができます」と続けました。

片上氏は「2万7500世帯以上の農業生産性を向上させることを目的としたこのプロジェクトを通じて、日本によるFAOの活動への支援を発表できることを光栄に思います」と話し、「このプロジェクトは、農業と畜産セクターを改善することによって農村部の住民に重要な人道的支援を提供し、それが世帯内の食料生産を活気づけ、危機に対するレジリエンスを高めることにつながります」と力を込めました。

このプロジェクトで、FAOは家畜に関する緊急支援と保護にも焦点を当てる予定です。(家畜に対する)予防接種キャンペーンをはじめ、動物飼料および動物に対する保健サービスを提供することで、貧しい家庭、特に子ども、妊娠中の女性、授乳中の母親という最も弱い立場にある人々が牛乳に代表される製品を入手できるようになります。

加えて、日本の資金は、FAOによる食料生産慣行の改善や、土地、土壌、水資源を持続可能な方法で管理するためのコミュニティの能力強化を可能にします。

忍び寄る大惨事を回避するためのFAOによる飢饉防止計画

この重要なご支援は、FAOが最近発表したイエメンにおける新しい飢饉防止計画で特定した生活支援のニーズに応えるものです。この計画は、最も脆弱で食料不安にある160万人に現金による支援や農業の生計支援を届けるために、今後6か月で約8300万ドルの資金が必要になると強調しています。

この緊急支援によって、最も脆弱な世帯の購買力の向上、地域の需要への刺激、市場機能の強化、また飢饉発生の危険性がある地域における食料の入手とアクセスの改善が見込まれます。 そしてこれはまた、地域の農業インフラの修復にも役立ちます。

世界最悪の食料危機

イエメンの現在の人道的状況は、過去数十年の間に世界が経験したどの状況よりも深刻です。 紛争が5年目を迎え、人々の生活への影響は日を追うごとに深まり続けています。

人々は自らの対処メカニズムを使いきり、国内で食料不安と栄養不良が広がっています。紛争は食料生産を極めて危うくし、人々の生活を破壊し、購買力を低下させ、多くのイエメン人にとって、最小限の必要な食料のニーズを満たすことを困難にしています。

2018年12月の最新の統合的食料安全保障レベル分類(IPC)分析によると、イエメンの1600万人近く(人口の53パーセント)が深刻な急性飢餓を経験しています。人道的食料援助がなければ、2000万人を超える人々(人口の67%)が深刻な食料不安になり、多くの人々が飢饉の危機にさらされてしまいます。

イエメンでは栄養不良のレベルも上昇し続けています。 最近の調査によると、3分の1近くの家族が栄養ある食事を摂れる状況にはほど遠く、豆類、野菜、果物、乳製品、肉などの食品を摂取することはほとんどありません。300万人を超える妊娠中および授乳中の女性と5歳未満の子どもの栄養不良を予防または治療するために支援を必要としています。

人口の54%の雇用を確保している農業は、イエメンの食料安全保障と栄養のために欠かせない分野であり、イエメンの深刻な食料安全保障の状況が悪化するのを防ぐために、人道的対応の不可欠な要素でなければならないのです。

FAOは2019年に860万人への農業支援を届けるために計2億1850万ドルを必要としています。

FAOと日本のパートナーシップ

FAOの通常予算への日本の貢献は世界2位であり、FAOが現在進めているフィールドでのプログラムに対する任意拠出において多大な貢献をしています。2014年から2017年の間に、日本の任意拠出9000万ドルを含む、計3億1000万ドル以上の寛大な貢献をしていただきました。2018年、FAOが実施する世界的人道支援プログラムに対する日本の支援は、1700万ドル強に達しました。

 

原文プレスリリースはこちらから(英語)

http://www.fao.org/news/story/en/item/1178826/icode/